成功談

バイオテクノロジーの集積地としてのスイス

微細藻類で新しい食や医療の可能性を開く

微細藻類で新しい食や医療の可能性を開く。YISのミッションは、スイスを拠点に、魅力的なバイオ技術領域を探索し、欧州や日本、インドなどの社内メンバーと一緒に研究活動に取り組み、新規事業を創出することです。

 

YISで研究開発に取り組む研究者 ©Yokogawa Innovation Switzerland GmbH
YISで研究開発に取り組む研究者 ©Yokogawa Innovation Switzerland GmbH

電気計器の研究所として設立された横河電機株式会社(以下横河電機)は、100年以上にわたり、計測、制御、情報の技術を生かして産業界の発展に寄与してきました。生産設備の制御・運転監視を行う分散型制御システムを世界に先駆けて開発した企業でもあります。1996 年、生きた細胞を高速・高感度で観察できる共焦点スキャナユニットの開発を皮切りに、バイオテクノロジー分野に参入し、近年は、持続可能な社会の実現に向けた課題解決にも積極的に取り組んでいます。その一環で、2020年6月に、Yokogawa Innovation Switzerland GmbH(以下YIS)を、翌年には横河バイオフロンティア株式会社を設立し、植物由来の次世代素材「セルロースナノファイバーS-CNF」など素材そのものの販売を行っています。 

現在は、“Cell as a plant”をキーワードに、微細藻類の可能性に着目しています

YISのミッションは、スイスを拠点に、魅力的なバイオ技術領域を探索し、欧州や日本、インドなどの社内メンバーと一緒に研究活動に取り組み、新規事業を創出することです。「現在は、“Cell as a plant”をキーワードに、微細藻類の可能性に着目しています。」と説明するチーフサイエンスオフィサーの野島大佑氏。これは、微生物自体に有用物質を作らせるということを意味しています。スイスのチーズや日本の醤油など、食品加工の発酵工程においてさまざまな微生物が貢献しているように、微細藻類を活用することで、食品や医薬品、先端素材、エネルギーなどの生産において持続可能性の高い工程の可能性が見出されています。その実現に向けて、YISは細胞株開発技術に着目し、独自のAI技術を利用した開発を進めています。 

今後、循環型経済を目指し、実践させていく上で、バイオテクノロジーは必要不可欠な要素になると考えられます。持続可能性への意識が高い欧州では、生物機能を利用した物質生産技術がますます中心的な役割を果たすことになるでしょう。生産コストや遺伝子組換え物質に対する法的規制など、課題も多く残っているものの、世界各地で新制度や革新的な技術も確立されてきており、近い将来有用な素材が開発されることへの期待が高まっています。 

スイス・イノベーション・パークが位置するバーゼルは、ロシュ社やノバルティス社をはじめとする製薬大手が本拠地を構えていることから、欧州におけるライフサイエンスの中心地となっています。スイスは、オープンイノベーションに対するマインドセットが浸透しているおかげで、新しい研究内容を理解する上での情報が豊富で、技術をウオッチするのに非常に有利な場所といえます。 

横河電機は、これまでにスイスをはじめ、スペイン、ドイツ、デンマーク、ベルギーのスタートアップに出資をしてきました。「スイス・イノベーション・パークが位置するバーゼルは、ロシュ社やノバルティス社をはじめとする製薬大手が本拠地を構えていることから、欧州におけるライフサイエンスの中心地となっています」とYIS社長の澤井恒治氏は述べ、さらに、「スイスは、オープンイノベーションに対するマインドセットが浸透しているおかげで、新しい研究内容を理解する上での情報が豊富で、技術をウオッチするのに非常に有利な場所といえます。」と、加えています。YISは、今後も学会や展示会、政府や貿易機関主催のイベントなどに参加しながら、藻類の細胞株開発技術を足がかりに、関連するスタートアップ企業や大学、研究機関などと情報交換や協業機会を模索し、欧州で更なる発展を目指しています。 

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