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製薬、医療技術事業会社の欧州本部

 

欧州市場への参入を目指す日本のバイオ医薬品企業にとって、スイスは、欧州本部、また欧州・中東・アフリカ事業の地域統括拠点として最適な場所です。地理的なメリット、ビジネスのしやすさ、多様な人材の集積地であることなどが魅力となり、メルクセローノ、武田薬品工業、バイオジェン、ジョンソン・エンド・ジョンソンといった企業がスイスを拠点開設の地として選択しています。

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コスト効率、弾力性のあるサプライチェーン、事業戦略の一環としての税務戦略

イノベーションの最大化、業務プロセスや構造のコスト効率化といった点で、スイスは本社や中枢機能の拠点として多くの利点を提供します。スイスには、多国籍企業の国際本部や欧州本部が多く存在します。財務、マーケティング、給与計算、研究開発、知財管理、グローバルサプライチェーンマネジメントなど、経営や業務の中枢機能をスイスに置いている企業は少なくありません。アジア、ヨーロッパ、米国のタイムゾーンの間に位置する地理的優位性、スイスの持つ優れたインフラと、収益・リスク管理ソリューションにより、質の高いサプライチェーン構築を目指す多国籍企業にとって、スイスは世界でも指折りの目的地となっています。

スイスでの国際的なサプライチェーンマネジメント業務の多くは、タックスプランニングを事業設計に組み込んでいます。このモデルの最大の特徴は、販売による収益と製造・流通によるリスクを、スイスの単一ユニットにプールすることです。これにより、事業活動、機能、リスクなど重要な要素をサプライチェーンマネジメントシステムに容易に一元化できます。さらに、企業は魅力的な税率の恩恵を受け、連結利益にプラスの影響を及ぼすのです。

 

欧州での製造販売承認取得の方法

上記のような税務視点を持つグローバルサプライチェーン構築が事業にもたらすメリットを適切に享受するためには、製品の製造販売承認(MA)や規制について理解する必要があります。MAを取得するための基本的な前提条件の1つは、企業が加盟国企業を通じて欧州経済領域(EEA)に法的プレゼンスを有していることです。審査にはかなりの時間がかかるため、書類提出の前に保健衛生当局に相談することが重要です。そうすることで、当局が提出書類を予測し、審査プロセスを迅速化できる可能性があります。

詳細な概要については、欧州医薬品庁(European Medicines Agency)が包括的なステップ・バイ・ステップガイドを作成しています: EUの製造販売承認を取得するためのステップバイステップ|欧州医薬品庁(European Medicines Agency)

 

EUおよび英国における製品の製造、輸入、販売に必要なライセンスについて

製造輸入承認(MIA)は、製品の製造と欧州連合(EU)への輸入に関連するものです。EU圏外からの輸入は製造工程とみなされ、MIAの取得が前提条件となります。適切な設備、ライセンスを監督する有資格者、品質管理システムなど、GMP(Good Manufacturing Processes)を遵守することが不可欠です。

また、タイムリーさも重要です。当局は最低でも90日必要としていますが、手続きには実際最長で9カ月かかることもあります。そのため、事前に十分な準備をする必要があります。

流通については、卸売流通承認(WDA)が必要です。この認可は、保管、輸送、流通に関して、MIAと同様のアプローチになります。WDAのプロセスのタイミングも、MIAと同様です。GDP(Good Distribution Practice)の遵守は必須であり、MIAと同じ規制に従います。

最後に、MB(Medicinal Brokerage)ライセンスは、その医薬品が販売されていない国での販売支援を可能にします。パートナーは、薬の調達、供給、所持がなくても、薬の売買が可能です。この手続きはより早く、より簡単ですが、加盟国での定住所とGDPガイドラインの遵守が必要です。

研究室からスタートし患者さんに届くまでの一連の流れは、欧州医薬品庁(EMA)が説明しています:

欧州における医療機器の規制

医薬品とは対照的に、欧州の医療機器はEUによる一元的な規制を受けません。その代わり、医療機器に関する国際規格が適用され、ノーティファイドボディと呼ばれる民間企業に承認が委託されます。デバイスが承認され、CEマークがされ付与されれば、販売することができます。英国では現在、UKCAと呼ばれる別のラベルが存在します。
スイスは従来CEラベルに準じていましたが、EUとの交渉がうまくいかず、現在はインバウンド専用となっています。つまり、スイスはCEラベルの付いた製品を受け入れることができますが、EU内の関連会社で受け取る必要があります。スイスと欧州連合(EU)の間の現在の政治状況を考慮すると、スイスの医療技術企業(第三国ステータス)は、医療機器規制(MDR)の実施に当たってはさらなる課題を抱えています。スイス・メドテック - スイスの医療技術協会がMDRポータルでガイダンスを提供しています。(MDRポータル|スイス・メドテック (swiss-medtech.ch))

マーケティング認可と卸売流通認可の役割

販売承認(MA)は、かつては国内手続きでしたが、現在は欧州医薬品庁(EMA)に一元化されています。EMAは、国内当局(rapporteur)と第2当局(co-rapporteur)を割り当て、MAが認められると、EEAで製品を販売することができます。MAは製品の供給者として少なくとも1人のMIA保有者を必要とするため、製造輸入承認(MIA)と連動しています。卸売流通承認(WDA)は、完成品の医薬品の取引のみを許可するものです。医療技術製品については、CEラベルが他のすべての国の基準となっています。

欧州の薬事医療機器法令とスイスの独特な立ち位置

ヨーロッパ諸国を主に取り締まるのはEUのGMP規則で、その枠組みは定期的に更新され、年々規制が厳しくなっています。まだ国によっての違いはあるものの、全体として規制を標準化する方向に進んでいます。

スイスも管轄の一つであり、EUのガイドラインに従ってEUや米国と相互承認協定を結んでいます。欧州経済領域(EEA)もEUのガイドラインに準じています。 

スイスはEUのGood Manufacturing Practicesのガイドラインに準拠しており、EUには属さないものの統合されているため、欧州外参考国として利用することができます。

一般的にスイスの規制はEUの規制に準じますが、Trade AbroadというEUには存在しないライセンス形態が存在します。これは欧州で最も規制が緩やかなライセンスタイプの一つです。スイスがさらに違うのは、国の所轄官庁であるスイスメディックとのやりとりのしやすさです。スイスメディックは欧州の中でも特に柔軟性のある、企業に優しい役所と言われています。

欧州への販売:スイス法人の3つの選択肢についてさらに詳しく見ていきましょう。


スイスからEUに販売する場合、3つの方法があります

  • 一つ目はスイスがEUに販売する場合です。スイス法人が所有するEU向け輸入販売製品をスイスからEUに販売します。
  • 二つ目は、スイスがEUの一部に販売する場合。スイス法人が所有するEU向け輸入・販売製品を、スイスから直接購入できるEU法人を経由して送ります。
  • 三つ目は、スイスが輸入・販売し、MIAを取得してEU諸国に発送する場合です。この方法は、国ごとにMIAが必要なため、より複雑です。

EU輸出向け医療機器製造におけるスイスの優位性

医療機器の場合、プロセスはよりシンプルです。製品をスイスで製造し、CEラベルを取得してEU圏に発送します。製品は、CEラベルがあれば自由に輸入されます。また、「Swiss Made」というラベルを付けて販売することも可能です。これは非常に高い品質基準をみたしていることを示すもので、他の産地の同等品と比べ販売価格の20%程度を占めることがあるという研究結果があります。

事業展開ハンドブック

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